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特定非営利活動法人デジタル・フォレンジック研究会 会長 辻井 重男(中央大学 研究開発機構 教授)
デジタル技術の進歩は、情報ネットワーク社会を急速に発達させ、私たちの生活の幅は飛躍的に広がり利便性も向上してきております。市民生活においてPCや携帯電話等のデジタル機器が普及しデジタル技術は私たちの生活に不可欠なものとなってきました。一方、昨今問題になっている情報漏えい事件に見られるように、デジタル技術を悪用した不正行為を働く者は、所謂ハッカーに止まらず、企業等の職員にまで広がってしまったことも事実です。 私は、科学技術は社会生活の効率性・利便性を高め、自由な基盤が拡大し、その自由を誰もが平等に享受でき、しかも安心・安全であることが同時に実現して初めてその存在価値があるものと考えております。すでに利便性・効率性・自由・平等などの基盤はほぼ実現しているといえるでしょう。しかしながら、安心・安全という観点ではまだ十分であるとは言えません。情報セキュリティの基盤整備が情報化社会の成熟の鍵であることを疑う余地はありません。 現在の情報セキュリティは防御に主眼を置いた受動的なものとなっておりますが、それだけではアクセス権限を持った人間による不正行為を完全に抑止することは出来ません。能動的にデジタル機器を調査することによって、不正行為が行われた事実を証拠化し、不正行為者を特定する技術が必要になってきます。それがデジタル・フォレンジックです。 フォレンジックとはある対象物に対して、高度な技術を用いて、証拠性を維持しつつ、法的問題を解決する手段で、わが国では以前から法科学などと呼ばれていた分野です。そのうちデジタル・データに関するものをデジタル・フォレンジックと呼びます。 セキュリティは工学・法学・犯罪心理学等が含まれる総合科学であり、法的問題を解決する手法であるフォレンジックの研究はまさに学際的研究といえます。 ネットワークの発達によりデジタル技術が社会の連続性を促進し、いまやデジタルの世界に国境は存在しません。当然、証拠となるデジタル・データのやり取りも国境に関係なくボーダレスに行われるため、その取り扱いに関する国際標準はなくてはならないものとなりました。現在、デジタル・フォレンジック技術の国際標準化に向けた動きがありますが、残念ながら、わが国はこの点において欧米に立ち遅れているのが現状です。 世界屈指の技術先進国である日本に発足した当研究会は、デジタル・フォレンジックを研究・普及・啓発することにより安心・安全を伴った、高度情報化社会の実現に寄与し、技術先進国として国際標準化においても世界をリードしていきたいと考えております。
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辻井重男 SHIGEO TSUJII
東京工業大学 工学部電気工学科卒業。 情報システム、暗号理論、 デジタル信号処理の研究に従事。 工学博士(東京工業大学)。 東京工業大学教授、 中央大学理工学部教授、 情報セキュリティ大学院大学学長・教授を経て中央大学研究開発機構教授に就任。 東京工業大学図書館長、 郵政省電気通信審議会委員、 電子情報通信学会会長、 総務省電波管理審議会会長 などを歴任。 電子情報通信学会論文賞・ 業績賞・功績賞、 郵政大臣表彰、総務大臣表彰、 米国電気電子学会第3千年紀記念賞、NHK放送文化賞等受賞。 東京工業大学名誉教授。 日本学術会議会員。 「情報セキュリティの日」功労者表彰受賞。 瑞宝中綬章受章。
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